チェット・ベイカー : カーク・ハメットの部屋

カーク・ハメットの趣味全開のページを作ってみた。fearfestevil_title.png



若き日の栄光からの波乱に満ちた人生は目も当てられないほどの痛々しさがあるが、その天才的な音楽の才能や「まずはシンプルなフレーズからはじめる」といったソロに関する考え方などはカークに影響を与えたと考えられる。

1929年12月23日、アメリカはオクラホマ州に生まれる。ミュージシャンとしては挫折した父親は、いわゆるロクデナシだったが、13歳のチェットにトロンボーンをプレゼントする(スライドを伸ばすとチェットの身長ほどあったため、トランペットと交換することになった)。音楽を勉強する忍耐力はなかったものの、高校のころには楽譜なしで耳だけで吹くなど才能の片鱗をみせる。過干渉な母親から半ば逃れるかのように軍に入隊したチェットは軍隊放送のラジオでディジー・ガレスピーら、ビバップ奏者に夢中になる。除隊後、高校・短大と進学したが、学業もそこそこに仲間とのキケンな遊びやジャム・セッションに興じていた。大麻常用により軍に再入隊させられても神経衰弱を装い除隊処分を受ける始末だった。

転機は1952年、チャーリー・パーカー(愛称バード)がロスでミニ・ツアーをするトランペット奏者としての役がまわってきたことから始まる。バードから認められたチェットはさらにバリトン・サックス奏者の大物、ジェリー・マリガンとピアノ抜きのバンドに参加し、好評を博す。マリガンが麻薬で逮捕されると、ロスのクラブ「ヘイグ」支配人ディック・ボックの助力を得てチェットをリーダーにしたレコードをリリース。1953年にはダウンビート誌の読者人気投票でトランペット部門1位を獲得するまでになる。翌年には、自らのヴォーカルをフューチャーした『チェット・ベイカー・シングス』を発表。これまでにない中性的で囁くような歌声は賛否両論を巻き起こす。この唱法にジョアン・ジルベルトが感化され、ボサノヴァが生まれたと言われる。

1955年、フランス人の恋人であるリリアン・クーキエを追いかけるように、ディック・ツワージクらを連れてヨーロッパでのツアーを開始。しかしバンドメンバーのほとんどは麻薬漬け状態となり、ツワージクが麻薬の過剰摂取で死亡したのをきっかけにカルテットは解散する。アメリカに帰国後、西海岸出身のサックス奏者アート・ペッパーと組んだ『プレイボーイズ』『イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー』などいくつかのレコードを制作するが、麻薬禍とともに酷評されることが多かった。自身の契約レコード会社の倉庫からLPを盗んで売りさばくなど麻薬を手に入れるなら何でもするジャンキーに成り下がり、1959年ついに逮捕される。

出所後は渡欧し、イタリアを拠点に活動を続けるが「詐病で手に入る薬」を前に麻薬中毒は深刻化。滞在先の国で次々と逮捕され、1964年にアメリカへ強制送還される。帰国後はフリージャズの潮流についていけずさらに逮捕歴を重ね、1966年には麻薬絡みで何者かに暴行を受けトランペッターとして重要な上あごの歯を失う。もはや満足な演奏ができなくなったベイカーは一時ガソリン・スタンドで働き、生活保護を受けるというドン底をみる。

1973年、ディジー・ガレスピーの助力によりジャズ界に復帰。義歯をつけての演奏、そして歌の腕前を徐々に磨き、翌年『シー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー』を発表。1975年から再びヨーロッパとアメリカを行き来するようになるが麻薬中毒は変わらず、その日の体調の良し悪しが演奏に露骨に反映された。1986年と1987年の2度の来日ツアーは例外で、中毒症状を和らげる薬を大量に持ち込み、麻薬なしで見事なパフォーマンスをみせる。1988年5月13日(奇しくも金曜日)、オランダのアムステルダムで謎の転落死。悲惨な人生を追ったドキュメンタリー映画『レッツ・ゲット・ロスト』は死後公開され反響を呼んだ。

多作のため、抜粋してご紹介。

01. That Old Feeling
02. It's Always You
03. Like Someone In Love
04. My Ideal
05. I've Never Been In Love Before
06. My Buddy
07. But Not For Me
08. Time After Time
09. I Get Along Without You Very Well
10. My Funny Valentine
11. There Will Never Be Another You
12. The Thrill Is Gone
13. I Fall In Love Too Easily
14. Look For The Silver Lining

01. Let's Get Lost
02. This Is Always
03. Long Ago and Far Away
04. Someone to Watch Over Me
05. Just Friends
06. I Wish I Knew
07. Daybreak
08. You Don't Know What Love Is
09. Grey December
10. I Remember You

1956年
PlayboysPlayboys

01. For Minors Only
02. Minor-Yours
03. Resonant Emotions
04. Tynan Tyme
05. Picture of Heath
06. For Miles and Miles
07. C.T.A.

01. Autumn Leaves
02. She Was Too Good To Me
03. Funk In Deep Freeze
04. Tangerine
05. With A Song In My Heart
06. What'll I Do
07. It's You Or No One

1983年
Mr.BMr.B

01. Dolphin Dance
02. Ellen and David
03. Strollin'
04. In Your Own Sweet Way
05. MisterB.
06. Beatrice
07. White Blues
08. Father X-mas

1985年
CandyCandy

01. Love For Sale
02. Nardis
03. Candy
04. Bye Bye Blackbird
05. Sad Walk
06. Tempus Fugit
07. Red's Blues
08. Red Michell
09. My Romance

01. Moon & Sand
02. Imagination
03. You're My Thrill
04. For Heaven's Sake
05. Every Time We Say Goodbye
06. I Don't Stand A Ghost Of A Change With You
07. Daydream
08. Zingaro A/K/A Portrait In Black & White
09. Blame It On My Youth
10. My One And Only Love
11. Everything Happens To Me
12. Almost Blue

My Funny Valentine