アリス・イン・チェインズ : カーク・ハメットの部屋

メタリカがスラッシュ／スピードメタルから、『Metallica』のヘヴィネス指向、『Load』、『Reload』でのグルーヴ指向となったひとつの要因としてこのバンドの出現が指摘されている。

1986年、シアトルにてバンド活動をしていたレイン・ステイリー（vo）がジェリー・カントレル（g）と出会い、前身バンドであるダイアモンド・ライ（Diamond Lie）を結成。幾度かの改名の末、アリス・イン・チェインズ（以下、AIC）に落ち着くこととなる。1987年、シアトルではサウンドガーデンをはじめとした（後にグランジと呼ばれることになる）ミュージック・シーンが花開こうとしていた。活動当初こそ80年代グラムメタルの色合いが強かったAICであったが、このシアトルシーンで次第に頭角をあらわすようになる。

1990年、メジャーレーベルのコロンビアと契約し、EP「We Die Young」を枚数限定で先行販売後、デビューアルバム『フェイスリフト』を発表。発売当初はセールスが伸びなかったが、シングル曲「Man In The Box」のヒットによりシアトルシーンを牽引するバンドとして認知されてゆく。シアトルシーンのバンドのなかで、メタルの影響が色濃かったAICは1991年、メガデスのUKツアー、さらにはアンスラックス、メガデス、スレイヤーのトリプルヘッドライナーのツアー「CLASH OF THE TITANS」にオープニングアクトとして参加する。この年、同郷シアトル出身のニルヴァーナが『ネヴァーマインド』、パール・ジャムが『テン』を発表し、グランジミュージックがチャートを席巻する。

1992年、AICの代表作となる『ダート』を発表。前作からのヘヴィネスと独特のうねりのきいたサウンドはさらに深まった。反面、バンドメンバー、特にレイン・ステイリーのドラッグ問題が徐々に進行。ドラッグ中毒者を描いた収録曲にもそれがあらわれている。翌93年には私生活と音楽活動の優先度の違いを理由にマイク・スター（b）が脱退。（※後にドラッグ依存症に苛まれていたことが判明。2011年に44歳の若さで死去。）オジー・オズボーン・バンドで活躍していたマイク・アイネズ（b）が加入する。さらにオルタナティヴ・バンドの祭典「ロラパルーザ'93」に参加、同年初来日を果たす。

アルバムの売上げが伸びる一方、レイン・ステイリーのドラッグ中毒が悪化。メンバー個々の活動が増え、不仲説・解散説も出るなか1995年、3rdアルバム『アリス・イン・チェインズ』をリリース。3本足の犬の写真が問題視され、日本盤ではジャケットが差し替えられた今作は全米初登場1位を獲得する。翌96年には、MTVのアンプラグドに出演。その模様を収めた『MTVアンプラグド』が発表されるも、ステイリーのヴォーカルの衰えは隠し切れず、バンド活動は停滞。1999年、バンド初のベストアルバム『ナッシング・セーフ』に収録するための新曲「Get Born Again」を発表したが、活動再開には至らず。2002年、ドラッグの過剰摂取により34歳の若さでレイン・ステイリーが死去してしまう。

このまま解散かと思われたが、2005年に行われたスマトラ島沖地震被災者支援のチャリティーコンサートにて、トゥールのメイナード・ジェームス・キーナンらをゲストボーカルに招いた形で再結集。翌06年には、ウィリアム・デュバール（vo）を新たに迎え活動を本格的に再開する。同年、ドイツで行われたロックフェス「Rock am Ring」のステージではメタリカのジェイムズ・ヘットフィールドが飛び入り参加している。さらに2009年には新編成による待望の新作『ブラック・ギヴズ・ウェイ・トゥ・ブルー』を発表した。